今、広告業界で最も売れているであろう若手フォトグラファーが奥山由之です。

その活躍は多岐に渡り、パルコミュージアムでの大型展示ベーコン・アイスクリームを皮切りにアーティストnever young beachやくるりなどのMVアートディレクション、ポカリスエットのCM裏を納めた写真集、GINZAなどのファッション誌のメインを飾るなど引く手数多の人物です。
今回はそんな奥山由之の魅力について書こうかと思います。
特徴
彼の写真の特徴としては徹底したフィルムによる撮影と丁寧に焼き込まれた写真にあります。
フィルムならではの淡いトーンを巧みにいかすのも彼の魅力の一つと言えますがそれは本質ではありません。
色の淡さなどは使用しているカメラや現像手法に依存するものであって、そこに何を写すのかがフォトグラファーの腕の見せ所なのです。
彼の特筆すべき点はその絵作りの上手さにあります。
彼の作り出す構図がスナップ形式ではあるものの、どこか作為的に作り込まれており、見ている側が面白いと感じるつくりとなっています。
そういった写真のあり方は昔ながらのファッション写真を踏襲しているのが分かります。
個人的な感想を述べるなら、
先日ローライ35の記事でフィルムカメラについて軽く話題にしましたスティーブン・ショアのような1970年代に始まったカラーフィルムを使ったスナップ写真の巨匠たちと、ファッション写真の世界で培われてきた作為的な視覚を刺激する描写が合わさったかのようで、とても古典的なのに新しさを感じる写真家という印象でした。
だからこそ、どうしようもなく魅力的に見えるのです。
トレンドを生み出すフォトグラファー
その輝かしいキャリアのスタート地点として欠かせないものが、やはり写真新世紀にて優秀賞を受賞したGirlでしょう。

コンセプトとしてはとてもわかりやすく一人の女性をひたすらにフォーカスしたものです。
何とも青臭い若さを感じるのですが、そこがまた美しい表現として作品の中に落とし込まれています。この作品から奥山由之という名は広まり、カルチャー雑誌EYESCREAMの連載 君の住む街へと繋がっていくことになります。

そして、彼にとって最も大きな展示を表参道ヒルズで行うことになりました。
僕もその展示に足を運びましたが、一人の写真家がここまでの人を集めることができるのかと驚きを隠せないほどに盛況を見せていました。
これだけでも彼は今まさに時代のトレンドを作り上げているのだとわかりました。
まとめ
奥山由之の写真は徹底してフィルムカメラでの撮影です。
使っているカメラも大判などの大がかりなものではなく、何なら手のひらで収まってしまうようなコンパクトカメラばかりを使用しています。
写真そのものの写りの良し悪しについてはともかくとして、こうしたフィルムによるノイズが走る写真を広告の現場で使うというのはある意味タブーな部分が大きいのは確かです。
ブツ撮りなどには特に嫌われる手法でしょう。
しかし、人をメインに添え、心情に訴えかけるような広告においては彼の撮る写真は実に大きな力を持ちます。
デジタルのもつ画一性を捨て去り、一点ものの確固とした強さがそこには宿っています。
だからこそ、見ている側を強く心を惹かれるのではないでしょうか。
これから先、彼がどのような世界を僕たちに見せてくれるのか。
それが楽しみで仕方ありません。
