美大受験と聞くと最近ではブルーピリオドという漫画が人気です。
この漫画とてもリアルに美大受験の現実を語ってくれていて僕自身とても好きな漫画の一つです。
美大受験は普通とは全く違う受験勉強をします。
そういう意味で美大を目指す高校生にとっては疑問ばかりが浮かんでくることでしょう。
僕自身、まったくの初心者の段階で美術予備校に通いデッサンなどを学び、美大生となり、
現在はデザイナーとして仕事をしています。
多少なりとも、今美大を目指そうと悩んでいたり、不安を感じている人の参考になるのではないかと思います。
そういうわけで、今回は僕の体験談も含めて美大受験についてお話をしていきます。
- 美大受験の内容
- どういう人が美大を目指すべきか
- 全くの初心者から目指せるかと体験談
- 美大のメリット
- 美大のデメリット
美大受験の内容
まず始めに美大受験は専科ごとに実技の内容が異なります。
絵画、彫刻といった皆が思い浮かべるような美術もあればデザイン、アニメーション、写真といったより社会と密接した学びをする専攻もあります。
大まかには以下のような5つにいずれかが試験で課せられます。
- デッサン
-
平面・色彩構成
-
立体構成
- 油絵、水彩画
- 学科試験
僕はデザイン科を受験したので、この中ではデッサンと色面構成、学科試験を受験しました。
それでは一つずつ解説していきます。
デッサン
デッサンは絵を描くことの基本となる「見たものをそのまま描く」という描画力を試される試験です。
使用するのは主に鉛筆か木炭となります。
こちらは試験の段階でモチーフを伝えられ、それを制限時間内までに完成まで描きあげる必要があります。
短い試験でも3時間、長ければ7時間に渡って絵を描くことになります。
モチーフは石膏像や手、様々なモチーフをテーブル上に置いて描く静物デッサン、もしくはモチーフを渡されず想定で描くデッサンなどもあります。
ありとあらゆるものを鉛筆や木炭の黒だけで、正確に描画するテクニックが必要となってくる試験です。
ほぼ全ての専科でこの試験は行われることもあり、美大受験においては避けて通れない試験と言えるでしょう。
平面・色彩構成
引用 funabi.ac.jp
引用 http://ohashiart.com/works01.html
平面・色彩構成は主にデザイン科の試験で科されます。
ここで使用するのはアクリルガッシュといった不透明の絵具です。
この試験では言葉(例えば光とか熱とかそういった形のない現象や感覚など)、もしくは実際の物をモチーフに選ばれます。
そしてそのモチーフを主役に、画面を色分けしたり、描画したりして
美しくレイアウトしていくのがこの試験です。
この試験で求められるものはただ描くだけではなく、ひと目でモチーフが主役であると分かるレイアウトであるとか、モチーフをいかにデフォルメし、分かりやすいものにできているかなど、よりデザイン的な意味合いの強いことを求められます。
絵具の扱いもさることながらそう言ったデザインをするということを強く意識しなくてはならない試験と言えるでしょう。
立体構成
こちらは紙や粘土といった素材を立体的に形づくりテーマを表現する試験です。
主にデザイン科のプロダクトデザインなど立体物をデザインする科や彫刻といった科で実施されます。
立体としての美しさ、影の落ち方など、より3次元の空間把握能力が非常に求められるのがこの試験です。
4浪の頃の立体構成。バーバラ・ヘップワース、ヘンリー・ムーア、ジャン・アルプなどの影響で曲面ベースの作品ばかり作っていた。 pic.twitter.com/SLftSg7jfJ
— 境 貴雄 / Takao Sakai (@takao_sakai) August 24, 2020
絵を描くことと立体をつくる力は実はとても密接しており、どちらも空間の把握能力がとても重要となってきます。
特にこの立体構成となると、その力はより強く求められるでしょう。
油絵、水彩画
おそらくこの試験が最も皆さんにとっては馴染みがあるかと思います。
真っ先に思い浮かべる美術のイメージと言っても過言ではないでしょう。
油絵は油彩学科、水彩画は日本画学科で主に課せられる試験です。
どちらも基本的にはテーマに従い、絵を描くというシンプルなものです。
シンプル故に、技術力、発想力の高さが自ずと評価のポイントとなっていきます。
この試験の一番難しい点は他のどの試験と比べても評価基準が曖昧という点です。
対策として、受験をする学校ごとの好み、傾向を調べ、それに合わせた絵を描いていくというのが一番シンプルな回答でありますが、それが果たして本当に良いことなのかは議論が尽きないテーマです。
学科
これは通常の受験と何ら変わりません。
大抵は2教科で英語と国語などが試験の対象となります。
東京芸大など公立、国立の大学に関してはセンター試験の受験がマストとなります。
傾向としてそこまで難しい内容の学科ではなく、中堅私立かそれ以下くらいのレベルでも十分な
試験内容となります。
美大受験の大半は先ほど上げてきた試験の対策でほとんどを使います。
そういう意味では学科は決して軽視すべきではなく、むしろ評価基準が曖昧な試験が多いからこそ
こちらで確実に点をとるというのも美大受験においては重要となってくるでしょう。
どういう人が美大を目指すといいか
美大は明確に絵を描くこと、ビジュアルをつくることを生業にしようと考える人にこそ向いている大学です。
彫刻家になりたい、絵本作家になりたい、カーデザイナーになりたい、広告代理店のデザイナーになりたい
etc..
そんな夢があるという人には間違いなく進めたいのが美大です。
4年間を全てその夢を叶えるために使うことができます。
そして何より、学校や在校生たちはその夢に対して協力的かつ理解をしてくれます。
これはとても大きなメリットではないでしょうか。
なんせ、絵を描くこと、物をつくることに対して、大学にいる皆が当事者なのです。
創作をすることに対して、おそらくこれまでの人生で一番の理解者と出会えることでしょう。
親が美大出身者でもない限り、絵を描くことに対して、あまり理解が及ばず、将来に不安を覚えて反対をすることが多いと思います。
僕の同級生でも最後まで親から反対され、学費をバイトと奨学金で支払っていた子も少なからずいました。
おそらく、高校生の間では色々な人が意見をしてくることでしょう。
中には絵を描くということを恥ずかしいことと思う人も少なくないと思います。
しかし、それは本当に狭い価値観の中でしか物事を見ることのできない意見です。
世の中には絵を描くことを生業にするだけの土壌が確かに存在しています。
僕自身、それで税金も家賃も、食費だってまかなって今日まで生きてきてるわけです。
ですから明確にやりたいことがある方には是非とも目指すべき場所だと思います。
全くの初心者から美大を目指せるのか※体験談あり
絵はかけないが美大を目指したいと考える人は実は一定数います。
かくいう僕も実は浪人の時にはじめて美術を勉強し始めました。
元々、キュレーターになりたいと考えていた僕は美大には興味がありましたが、とても美大に入れるような画力はありませんでした。
普通の大学でもキュレーターにはなれる。そう思って受験をしましたが結果は希望の学校には受からず、浪人を決めました。
ですが、逆に浪人になって踏ん切りがついたこともあり、やはり美大に行きたいと考えるようになりました。
それではじめて美術予備校に足を踏み入れたのです。
結果はもう散々ではありました。
毎日毎日デッサンと絵具を使う日々です。
正直に言えばかなり苦しい時期でした。
他の予備校生は高校の頃から目指していた子たちばかりで、そもそもの画力が天地ほどついていました。
そして、僕はあまり器用なタイプではありません。
技術を身に付けるのにも相当な時間を有しました。
ようやく、ましなデッサンが描けるようになってきたのは秋の始めくらいだった気がします。
それでも周りとの差は激しく、それなりに辛い思いはしていたと今でも思います。
結果として僕は滑り込むような形で何とか美大に進学することができました。
全くの初心者だから目指すのが怖いという気持ちもよく分かります。
僕自身が、そうだったのですから理解できると思います。
手前味噌な話ですが、僕自身本当に何にもないとこから始めて入学にまで至れました。
なので初心者が目指すことは間違いなく可能です。
必要なことは努力と根性とちょっとした勇気だけです笑
美大のメリット
美大のメリットはやはり理解者が多くいるという点です。
これは何よりも得難いものであることは絵を描く人、創作する人にとってよく分かるのではないでしょうか。
そして、学ぶための環境が全て揃っているのも大きなメリットでしょう。
絵画や彫刻などは自宅では満足に制作活動に打ち込むのは難しいことが多いと思います。
自分で、買うにはあまり高額な設備機材も美大では間違いなくあるので、創作活動においてこれほど
充実した環境はありません。
将来就職するにせよ、作家として活動していくにせよ、可能性を広げていく上では大きなメリットがたくさんあると思います。
Name 将来デザイナーになりんだけど、やっぱり美大や専門学校に進学した方がいいのかな? こういう悩みを抱えた高校生、浪人生は多いと思います。結論から[…]
美大のデメリット
もちろん美大にもデメリットがあります。
まずは将来の可能性が著しく狭まるという点です。
就職先の幅が狭い
他の大学であれば色々な業界に就職先があるでしょう。
しかし、美大となってくるとゲームや広告、プロダクトといった画力や美大で学んだ知識を生かせる業界以外ではかなり就職率が厳しいのが実情です。
これは絵画や彫刻といった学科の生徒が就活をしないで、作家活動に専念していくのも影響してはいますが、
世間の美大のイメージがあまり上手く浸透していないのがあるかと思います。
昨今ではデザインという分野において、その重要性を理解する動きもできつつありますが、
それもまだまだこれからの段階です。
そういった意味でも潰しが効かないとよく言われるのが美大というわけです。
だからこそ、明確になりたいものしたいものがない人にとっては逆に将来マイナスに働いてしまうかもしれません。
学費の高さ
もう一つは学費が平均よりずっと高いという点です。
私立の美大では年間で約150万。
さらに初年度の入学金などがかさみ、4年間で600万はかかるでしょう。
(この学費の高さは主に人件費として使われています。
美大となると有名な講師、教授を抱えているだけに予算がだいぶかさみます。
また設備の維持費、投資なども必要となってきます。)
学費の高さはやはり大きなネックとなるでしょう。
もちろん国公立の美大であれば学費はこの例とは比べ物にならないくらい安いです。
おおよそ3分の1程度でしょう。
しかし、その分倍率も高く東京芸大などは20倍などざらにあります。
地方の国公立ではもう少し入りやすくはありますが、それでも狭き門であると言えるでしょう。
こういったお金についてもよく考えて進路を模索していく必要があると思います。
まとめ
今回は美大受験に対しての疑問や悩みなど実体験も含めてお話しさせていただきました。
高校生(また浪人生)にとって進学は人生においてもものすごく大きな決断だと思います。
今回の記事がその決断への少しでも参考になれば幸いです。
美大を目指す上で、避けて通れない問題が就職についてです。 美術科やデザイン科で多少の違いはありますが、全体的には就職率は高くありません。 そもそも美大は何をやっているのか分からない人には全くピンとこないでしょう。[…]