![](https://i2.wp.com/libertyde.org/wp/wp-content/uploads/2020/04/マイドキュメント-1-1.jpg?resize=370%2C320&ssl=1)
なんでなんだろう?
海外のデザインってスッキリとしたデザインでどれもカッコいい印象がありますよね?
それに引き換え、日本のデザインは妙に情報過多でごちゃごちゃしています。
単純に比較してしまうものではありませんが、どうにも海外のデザインに比べダサいですよね。
ですが、そう感じてしまうのは否めないでしょう。
しかし、それは日本のデザインのレベルが低くて、稚拙というわけでは決してありません。
むしろ、かなり細かな部分までしっかりと考えられてつくられているのが日本のデザインなのです。
では、なぜ日本ではそういった情報過多なデザインになってしまうのか。
今回はそのことについてお話しようと思います。
日本のデザインは何よりも分かりやすさ(ベネフィット)を意識しています。
大前提として、企業が自社のデザインに求めるものは何よりも分かりやすさというものがあります。
なぜなら、それが何の商品でどういった特徴があるのかがスピーディーに伝わらなければ売れないという事情があるからです。
分かりやすさとはその商品の特性を端的に伝えるということです。
ここで具体的な例として、みんなよく知る「雪見だいふく」のパッケージデザインで考えてみるとしましょう。
引用 https://www.lotte.co.jp/products/brand/yukimi/lineup/
まず、雪見だいふくの特性として大きく2点があります。
- もちもちした食感
- アイス商品であること
この二つの点をまず消費者に一瞬で分からせなくてはいけません。
このパッケージデザインではそれを解決するために以下のことを行っています。
- 「今日ももちもち」のあしらい
もちもちした食感をイメージできるように餅の形をしたアテンションを使っています。さらにコピーはひらがなでもちもちと表記することで、より柔らかさを表現するのに一役買っています。 - タイトル文字
文字の形状も丸っこい形と白をメインカラーにすることで、餅の柔らかさとミルクアイスの白さを想起させています。 - 商品写真(シズル)
アイスであることと餅であることを分かりやすく伝えるために、断面が見えるように切り分けられた写真を使っています。
こうすることで、表面の柔らかな餅と中にあるアイスを消費者によく分かるようになっています。また、レイアウトも商品のシズルが目立つように工夫されています。
ここにさらに消費者の購買意欲を掻き立てる工夫も行っています。
- 全体のカラー
まず、店頭で目立つ強い赤を使っています。これは売り場で何より目立つための色選びです。まず売り場で目立たなければ消費者は注目をしてくれません。 - 商品情報
細かな商品情報も全体カラーに馴染むように赤で統一しています。こうすることで、それなりの大きさで配置しているにも関わらず、デザインの邪魔をしないよう配慮がされています。 - 商品写真と背景のコントラスト
背景を赤にすることで、商品写真(シズル)の白さがより際立ち、一目でそこに視線が向かうようにデザインがなされています。
シズルに目線が集中することで、美味しそうと消費者が強く感じるようになります。 - その他のあしらい
ただあかの背景のみでは視覚的にも味気ない部分があるので、前後間のある雪の表現と雪の積もった緩やかな曲線で、絵としての面白さを引き出しています。
いかがでしょうか?
これだけでもかなり合理的に分かりやすさと購買意欲をかき立てる工夫がこのデザインに詰め込まれていることが分かると思います。
逆に言えば、デザイナーはたった2つの伝えたいことを解決するために、いくつも工夫を凝らさなくてはいけないのです。
そして、日本ではこの情報伝達がしっかりとしたデザインが求められ、そして売れるのです。
こうした消費者が求める情報をベネフィットと呼びます
だからこそ必然的に日本のデザインは情報過多を起こしてしまい、デザインがダサいという感想を抱かれてしまうのです。
徹底して情報を制限してその分装飾性を高めた良いパッケージデザインが台無しになっていく様を目の当たりにして咽び泣く例でございます pic.twitter.com/em4o3uhOT1
— シカクガング (@shikakugangu) June 3, 2018
デザインの敗北 ベネフィットを無くすことで起きた失敗
では、ここで先程とは真逆の徹底した情報整理を行ったデザインを紹介しようと思います。
引用https://news.mynavi.jp/article/20130128-a117/
こちらは佐藤可士和さんがデザインを行ったセブンイレブンのコーヒーメーカーになります。
このコーヒーメーカーは日本語がまったく表記されておらず、英語とシンプルなマークのみでデザインが作り上げられています。
このようなプロダクトデザインのかっちりした形と日本語の有機的な形状はあまり相性がよくありません。どうしても違和感がでてきてしまいます。
だからこそ、その違和感を排除し、英語のかっちりした形状のみで構成していきたかったのでしょう。結果として、見た目のデザインはとてもスタイリッシュで素敵なものになっています。
しかし、このコーヒーメーカーに対して消費者からクレームが届くようになります。
![](https://i2.wp.com/libertyde.org/wp/wp-content/uploads/2020/04/マイドキュメント-1-1.jpg?resize=370%2C320&ssl=1)
このような操作に対する説明(ベネフィット)が欠如し、結果としてユーザーにストレスを与えることになったのです。
人は分かりにくいことに対して強いストレスを覚えます。
これは消費者が求めるベネフィットが欠如しすぎていたということに他なりません。
結果としてこのコーヒーメーカーには日本語のテプラを貼られてしまい、ダサいデザインが誕生してしまいました。
佐藤可士和さんが求めていたデザインを逆行するという結末を迎えてしまったわけです。
最近ではこれに似た事例にローソンのプライベートブランドのデザイン問題があります。
こちらの記事でその問題について詳しく解説しています。
興味がある方はぜひご一読ください。
https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1397500_2504.html より引用 最近、ローソンのプライベートブ[…]
日本のデザインとベネフィット
あらためて、ここでベネフィットについて振り返ろうと思います。
ベネフィットとはその商品を買うことで得ることができる効果、価値などの情報を意味します。
「ステーキを売るな、シズルを売れ!」というマーケティングにおいて有名な言葉があります。
これはつまり、ステーキそのものを売るのではなく、ステーキを買うことでどういった効果や価値が得られるのかを消費者に分からせてあげるという考え方です。
この言葉はアメリカのセールスマン エルマー・ホイラー氏が1937年に書いた本「ホイラーの公式」の中に登場するものです。
氏のこの言葉は1971年に日本語訳として伝わり、日本の広告業界へ深く浸透していきました。
そしてその思想は、今もなお僕たちの社会に根づいているのです。
まとめ
日本のデザインがダサいと言われてしまう理由は、ベネフィットを消費者が求めているが故に、限られた画面の中に情報をいれていく必要があるからです。
消費者はその商品から得られる価値(ベネフィット)を求めています。
日本のデザインはホイラー氏の「ステーキを売るな、シズルを売れ!」という思想を連綿と引き継いできたわけです。
海外のデザインが格好よく映る一番の原因は文字です。
アルファベットの幾何的な形はとてもかっこよく見えます。
一方で日本語はなんとも有機的でぽってりとした印象で、どうにも野暮ったく見えてしまいます。
しかし、どれだけかっこよく見えたとしても、意味を理解できなければ消費者は購買しようとはなりません。
こうした理由から、日本のデザインはよりベネフィットを伝えるためのデザインの技術を高めてきたわけです。
結果として、その見た目は野暮ったく情報過多となり、ダサいという印象を抱かれます。
しかし、消費者にすぐさまベネフィットを伝えることができる日本のデザインは、本質的な意味でとてもレベルの高いものであると僕は思います。
ダサく見えるデザインも、そこにはとても合理性に富んだ知識と経験、技術が詰まっているのです。
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