デザイナーに一番必須なスキルはエンパシーができること

デザイナーに必須なスキルと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
IllustratorやPhotoshopのようなグラフィックソフトの操作スキル?
印刷やディスプレイなどのアウトプットのための知識?
こういった要素は確かにデザインの上で必要なスキルではあると思います。
しかし、それはあくまで表面上の話でしかありません。
つまり、アウトプットをつくるだけのスキルです。
もっと根幹の部分で必要なスキルがデザイナーにはあると僕は思っています。
それこそがエンパシーです。
今回はこのエンパシーについて記事を書こうと思います。

 

 
 

エンパシーとは英語でempathyと書きます。
このエンパシーを辞書で調べてみると「共感」「感情移入」「自己移入」と出てきます。
なんだか僕たちが普段使っているシンパシーと同じ意味のように聞こえてきますよね?
実際、エンパシーとシンパシーはかなり似通った単語です。しかし、その言葉の意味は微妙に異なっています。

シンパシーは同情や、相手の思いに対して同意を示すという意味の言葉です。
人間であれば誰もがこのシンパシーを他人に抱くことでしょう。そして、それはある当然の感情の機能として僕たちの中に根付いています。

ではエンパシーはというと他人の感情や経験などを理解する能力を意味しています。
ここで明確にポイントとすべき点は能力という点です。
つまり、エンパシーとはシンパシーとは違い、後天的に身につけるスキルということなのです。

より具体的な例で説明してみようと思います。
例えば、街中で泣きながら親を探す子どもを見つけたとしましょう。大抵の人間はそんな子どもに対して心配したりかわいそうと思いますよね?
この時の同情心がシンパシーです。
これは誰もが子どもは庇護対象であるという認識をもっているからです。
だからかわいそうだと思うのは当然の流れです。

では、エンパシーの場合の例をあげましょう。
あなたの住んでいる街から遠く離れた外国の地でデモ運動が起こっているとします。
大抵の人には自分とはまったく関わりのない地での話など聞き流す程度でしょう。
ここで、デモ運動を行っている人の感情や思想を想像してみましょう。なぜこの人達はデモを行っているのか、その原因や理由などたくさんの情報を紐付けて考えていかなくては想像はできないですよね?
つまり、自分とはまるで関わりのない他人の感情を想像する力。
それこそがエンパシーなのです。

 

 

なぜデザイナーにエンパシーが必要なのか

 

では、なぜデザイナーにエンパシーが必要なのでしょうか?
これはデザインというもの自体が言わば他者のために存在するものだからです。
お客様が伝えたいと思っていることを別の誰かにすぐさま伝えるために様々な要素を駆使していくのがデザイナーです。
そのためにはお客様の思い、そしてその思いを届ける相手の感情を想像していく必要があります。
そうでなければデザインの正解を導き出すことができないからです。

 

大抵の人は他人には興味がありません。

そして、デザインはそんな大抵の他人のためにあるのです。だからこそエンパシーという能力が何よりも必須なスキルとなるわけです。

 

 
 

エンパシーが発揮されたデザイン例

 

それでは具体的にエンパシーが発揮されたデザイン事例を紹介しようと思います。

 
※1
 

こちらはLOTTEから発売されているガムACUOです。
このACUOは口臭対策用のガムとして有名ですが、その見た目にそういった口臭対策のベネフィットは一切乗っていません。シンプルに設計されていて、爽やかなグリーンのグラデーションと文字がとてもカッコいい。

 

ここで皆さんに考えてほしいのは口臭対策のガムを買う人の気持ちです。

端的に言えば口臭対策のガムを買うということはその人は何となく口臭を気にしているということでしょう。
口臭はかなり繊細なワードです。
指摘されれば傷つきますし、口臭を気にしていると思われるのもどこか恥ずかしい。
僕は前の記事で日本のデザインはベネフィットを明記したがる傾向があると書きました。
しかし、こういった繊細な問題をもった商品に対してはむしろ、ベネフィットされればされるほど買いづらく使いづらいという欠点がでてくるのです。

 
 

ここでアクオのデザインをもう一度読み解いてみましょう。
まず、パッケージそのものには日本語で説明が一切ありません。そしてその見た目はとてもシンプルでカッコいいものとなっています。
色使いも秀逸です。
まず、きれいなグリーンのグラデーションが端から効いているのが綺麗になっていく口臭をイメージをしてのものではないかと読み解くこともできます。
そして中心に向かっていくにつれクリアな銀色となっていくことで清潔感がとても溢れていきます。
そして何よりもこの見た目がとても素敵な仕上がりとなっているので買いやすく、使っていても気にならない。
これは口臭を気にする人にとってとてもありがたいデザインと言えるでしょう。

 

何も考えずデザインをつくってしまえば、きっとこういったシンプルでベネフィットが何もないデザインには決して到達しません。
これだけでもいかにデザイナーにとってエンパシーというスキルが必須かが分かるのではないでしょうか。

 

まとめ

 

今回の記事をまとめると、

デザインにおいて最も必須なことはどれだけそのデザインを求めている人の気持に寄り添うということです。
それこそがエンパシーの本質なのです。


エンパシーは決して簡単な知的作業ではありません。
自分にとって縁遠い相手の気持ちを理解するにはとてつもない労力と知識、意欲が必要だからです。
そして、デザインにとってこのエンパシーは避けて通れない根幹を担っています。
これから数年後、おそらくグラフィックソフトは誰でも扱えてしまえる時代がくることでしょう。
その時、デザイナーとして生きていくには普遍的に変わることのないスキルであるエンパシーが何よりも必須なスキルとなっていることでしょう。

 
    引用元
  • 1 http://www.nendo.jp/en/works/acuo-2/?egenre
 

 

 
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